rakutabist
credit
Direction: izumi inoue
Art direction +Design +Flont-end development +Back-end development: yoshihiro mizuta
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デザインのテーマは奥田さんが紙芝居師とのことで、紙芝居。細部までアナログチック。お気に入り。
description
車いす生活をしている方にとっては、数センチの段差が大いなる恐怖だという。
うん、うん……。聞いたことがある。なんとなく分かる、想像できる。かも。
『最強のふたり』という映画(名作!)では、巨万の富を手にしつつも身体が不自由で車椅子生活を強いられている男が主人公だった。もう一人の主人公は、心も体も飛び切り自由だが、貧乏な男だ。この二人が出逢うことで生まれるドラマを、この作品はポジティブに描いている。
井上雄彦先生のリアルという漫画(名作!)では車椅子バスケが主題となっている。健全な身体が、ある瞬間、自分の思い通りに動かなくなる。読みながら、自分もいつかこれと同じ事が起きる可能性があるのだ、と考えると、胸が苦しくなる。自分だったら一体どうするのか……。
どちらも大好きな作品だ。
わたくしは比較的映画や漫画に多く触れている方なはずだが、そういった体験は、こういう場面で『想像力』へと転化し活きるのか、とハッとする。素晴らしい、たくさん映画を観てきて漫画を読んできて良かった──。
車椅子の段差の話を思い返しながら、そんなことを考えてみる。
ダイアログ・イン・ザ・ダークという催しがある。
一切何も見えない、暗黒とも言えるような真っ暗闇な空間の中に入ることで、もしも目が見えなくなったら……、という身体状態を疑似体験できるエンターテイメントだ。
わたくしは参加したことはないが、実際に体験した人の話に寄れば、参加者は皆想像とは違った行動を示すという。人生観が変わるらしい。大変興味深いので、いつか体験してみたい、と強く思っている。
たしかこの話は、昔、ラジオで耳にした。
さて。
この度、このラクタビストを制作したのだが、そのさなかの話。
ディレクターは井上さんで、お相手の奥田さんとやり取りはすべて彼女を通して行っていただいた。その節は、大変お世話になりました。
奥田さんは、普段インターネットをほとんどつかわないそうだ。けれども、ウェブサイトの必要性を強く感じていたらしい。その後しらばくのうちに、紆余曲折があり、このプロジェクトは始まる。その経緯の詳細はこの話にさほど関係はないので省略。
わたくしはいつものようにWordpressという仕組みで、ブログをつくった。『みんなの西伊豆通信』というブログだ。ブログはよくあるコンテンツなので、わたくしはいつもの通りに組み立て、何事もなく、それはやがて完成した。
その後、井上さんからこんな話を聞く。
それは、彼女がWordpressのレクチャーのために西伊豆まで行き、そこから戻ってきたときのことだ。
「(奥田さんが)自分でブログが更新できてとっても感動していましたよ。初めは『サイトが壊れちゃうかもしれない』と怖がっていたけど。『記事を追加すると、自動でトップページも更新されるんですね!』と感心していました」
とのこと。
わたくしは、それはそれは大変喜ばしい光栄だ、と感じるのと同時に
「当然だ」
とも思う。そのようにつくったのだから、そのように動くのは当たり前のことだ。
たいへん不思議。その気持ちがよく分からない。ウェブサイトはそんな簡単には壊れない。
と。ここで最初の話に戻るのだが。
『想像する』ということにおいて、知らないことを、他で得た知識や体験で埋め合わせて、プラスに作用させることは、まだ容易い。『映画』や『暗やみ』の例のように。
しかし、既に学び習熟してしまっていることを、さも知らないかのように振る舞うのは、極めて困難だ。それを今回痛感した。インターネットのプロが、インターネットをつかわない人の気持ちになってみよう、と言うのは簡単だが、なかなかできることではないのだ。できたとしても、それはただ『できた気』になっているだけかもしれない。それに細心の注意を注がねば。
海を初めて見たときの感動はもう想い出せない。あの時食べた3,000円 のとんかつの味は、その名店へ再び赴いても味わえないだろう。記憶から消えかけている、大学時代にあのバンドの音を初めて生で聴いたときの、地鳴りのような心の震えは、もう二度と……?
こうして、わたくしはまた一つ学んだ。
それがプラスに働くのか、マイナスに働くのか、果たして……。